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本日の独り言

Testimonial 2021.10.08

阿部篤志様

音楽家は大きく2つに分けられると思っている。

他人がどうあれ、時代がどうあれ、何があっても自分はこれだという武器を最大限まで認め、自分を愛するが如く音を奏でる。ちょっぴり自意識過剰だが、まさしく「アーティスト」とも形容される音楽家。

そしてもう一方は、周りの廻りめく音、また時の流れに敏感かつ柔軟で、それらに経験と知識でもって自然と迎合することができる。八方美人とまでは言わないが、自分の望まない音楽でもしっかり対応する職人、「マイスター」タイプの音楽家。

決してどちらが偉いとかそういう話ではなく、それは個人の【生き様】なんだということを明記しておく。また生き様が見えないというのは、その判断される土俵にも立っていないことを意味する。

ちなみに自分がどちらタイプですかと聞かれたら、ちょっとだけ言葉に困る部分があるのだけど、野心だけは誰よりも持ち続けていて、少年のような心で今でも何かを追い続けている求道者ということにしてもらおう。

音楽家が音で会話するというのは本当のことで、一緒に音を出せば、逐一この人はこういう人なんだなとしみじみ思ったりする。それは決して相手を卑下、軽蔑するような類のものではなくて、尊敬、尊重、また羨望のようなものであり、楽器の上手さがどうとか、音楽性の違いを超越されたところにその想いはあるのだが、その反面では冒頭のようにどこかでカテゴライズしては、無意識にレッテルを貼ってしまうことも否定できない。
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古南氏と初めて会った時は、5・6年前だろうか、とあるコンサート会場でのピアニストと調律師との関係だった。

最初は調律師としての彼の振る舞いはごくごく一般的なものであったと思うし、演奏家に過度なものを要求されない、自然な流れだったと思う。マイスタータイプと判断する。

同郷ということもあり、自然と迎合。早々に連絡先を交換。正直なところ、岡山行く際にはまたよろしくお願いします!呑みにでも行きましょう~的な軽いものだったかもしれないのだが、古南氏の好きな音楽話が始まった途端、全ての主導権が移動したのが分かった。。

見識を聞けば聞くほどそれは深海の如く。世界にはこんなにも素晴らしいものがあるのだよと教えてくださっているのと同時に、オヤオヤ?こんなマニアックな人は他に知らぬぞ、と半ばヒクほどの圧も感じられた。。。

じわじわと彼のペースに嵌まる。。。。

心までも支配されるかのようだった。。。。。

クラシック的な厳格な規範のようなものも、民族音楽のような血が脈動するようなもの、それらは僕の心を離さない大変興味深いものだったのだ。

それでもまだ疑っていた。彼が何者であるのかを。

調律師の肩書きを消してしまう、名前を変てしまうほどの太鼓叩きと知り、さらに謎めく。

なんだかんだ言って僕は演奏家!しかも即興をメインとした今瞬間を生きたいんだ。やっぱり現場主義なのですよ!言葉はいらない!音楽家は醸し出す音全てが本質、音=人間なんだ!その考えだけはこれから先も変わりようがない!

早速ライブが企画され、大袈裟でもなんでもなく、ついに音が交わる日が来ると決まると、僕は心踊らされた。

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Mr.Jackie はアーティストの音だった。

大人の遊びであるのと同時に全く少年のような清い音がしていた。あれだけ言葉を紡げる人が実に純真無垢な音で、その音楽を楽しんでいる。

出会ったことのないような音に接した時、自分が怯んでしまうことに気づく。怯むというと遠慮してるみたいになるのだが、Mr.Jackie の醸し出す音を味わいたくなったのだ。とてもいい肌感覚があるのだ。

ライブの演出は何から何までMr.Jackie によるものだ。こちらの提案する余地がないほどに全てが出来上がっている。まさしくアーティストたる自己演出。MCの間合いから全てが全て彼の計算だ。しかし本人は計算できないかの如く、その場を味わっているからまた凄い。

僕は怯むと同時に、他から植え付けられた安定を壊しにも行けるのだが、今となってはその行為も恥ずかしく思う。委ねれば良かったはずだ。

古南氏とMr.Jackie は同一人物である。

別人のようであり、当然のように確かに重なり合う部分がある。それは彼の持つ”優しさ” が全面的に感じるものだった。決して他を排除するものではない愛そのもの。

それはアーティストだとかマイスターだとか、そんなカテゴリーすらも超越する【生き様】それはまさしく人間の音だった。

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印象に残るライブを経験した時、人のレッテルを貼ってる場合ではないことにいつも気づく。自分が何者であるのかに必ず立ち返る。自分がどんな音を出したいのか、常に向き合っていかねばならないと思う。

人生の道標を提示してくれる人とまた出逢った。

また一緒に音を紡げる時が来るのを心から楽しみにしている。

古南氏の調律されたピアノの秘密。少しだけ分かった気がする。
ー 2021夏 ー

阿部篤志 プロフィール
1975 年 岡山県倉敷市出身
大学は法学部に進むが、独学でピアノを始め、熱中するうちに趣味では収まらなくなり、いつしか音楽の世界に飛び込む。その後、都内を中心にピアニストとしてライブ活動、さらに様々なアーティストへの楽曲提供、舞台音楽への参加、テレビラジオ等の出演など、多彩な活動を展開。

主な活動として、近年は東儀秀樹&古澤巌&coba の全国ツアーのバンドマスターを務める。葉加瀬太郎・NAOTO・石川綾子・ジョン健ヌッツォ・一青窈・MayJ・河村隆一・石丸幹二・カルメンマキ・宮川彬良・日野皓正…等共演アーティストは多数。

また舞台音楽も手がけ、世界的ダンサー森山開次『TSUBASA』、池袋芸術劇場主宰『チェーホフ?!』『障子の国のティンカーベル』、岸恵子朗読劇『蝉しぐれ』松坂慶子朗読劇『わたしのエディット』仲代達矢『小公子』『名犬ラッシー』などの音楽監督も務める。またCM 音楽『白松が最中』『三昭堂』などでもその才能を発揮。

海外公演も多く、2022 年はフランス人歌手との南米3カ国ツアーを控えるなど。
世界で愛されるピアニストであり続ける。